
徒然日記
よごれてしまった足袋
つい先ほどのことだ。電車がゆれ、その途端誰かの体重を右足小指に感じた。
「ごめんなさいっ!」とあっちの方を向いたまま早口でつぶやいた彼女は数メートル先にある1人分だけポッカリと空いた座席目掛けて突進して行き、ふわりと尻を重力に任せたかと思うと勢いよく降下し、両隣に座っている人たちの間に、はまった。さながら人間版テトリスのようである。しかもたぶん、ある瞬間に十字キーの下ボタンを押していた。
自分もスニーカーの際、よく人の足を踏んでしまう。これは気をつけなければいけないと常々思っているけれどどうにも難しい。その点、着物の日は摺り足だから、草履で人を踏んでしまうことは少なかったかもしれないと振り返った。
そういえば、今日の私は、着物だった。おろし立ての真っ白な足袋には、半円形の黒ずんだ跡がくっきりと余韻を残す。「足袋が汚れていたら、お座敷に上がれないのよ。」そんなふうに、置き屋のおかあさんがよく言っていた。おかあさん、元気かな。
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