福ちゃんの「日本料理に心酔中!」〜食事が2倍楽しくなるブログ〜

金山町火葬場の告別室の窓からは、杉の森が見える。
人の暮らし

美しい杉材木のまち。山形県金山町

山形県の、ある美しい街に行ってきました。

『金山町(かねやままち)』です。

山形県北東部に位置し、全国に先駆けて美しい景観づくりに取り組んできたこの町。

地元の材木である「金山杉(かねやますぎ)」の建築と、住民の方々の郷土愛がとても印象的でした!

写真もたくさん撮ってきたから、観てね!

金山町は、街並み景観づくりの街!

金山町(かねやままち)は秋田県湯沢市と隣接し、かつては羽州街道沿いの宿場町として栄えた。

人口は約 5500人。

実はこの街、全国に先駆け、昭和30年代から美しい街並みづくりに取り組み始めている。

昭和61年には「街並み景観条例」を施行。「風景と調和した街並み景観づくり100年運動」を展開し、地域住民とともに歴史と景観を守り続けている徹底ぶり。

注目すべきは、見目麗しき木材「金山杉」。

金山杉の特徴①美しさ

金山杉は年輪が緻密で揃い木目が細やか。高品質な木材である。

これは冬は2m以上の積雪を記録する、寒冷で湿潤な金山町の気候のおかげだ。

日本にある「三大美林」は青森ヒバ、秋田杉、木曽檜であるが、金山杉は秋田杉の地域品種。

その品質の高さから、「金山杉の家」にこだわる建築家も増えてきているそうだ。

金山杉の特徴②ダイナミズムを叶える長期的な山づくり

金山杉は太く、背が高いため、梁(はり)や桁(けた)など、ダイナミックな室内空間を作ることが出来る。

家一軒分の木材を同じ山から用意することも、できるほどだ。
  

大木になるには、圧倒的な樹齢が必要である。
家一軒分の木材を同じ山から用意するには、量が必要である。

なんと金山町は、両方叶う。
樹齢100年、150年を超える大木が存在、しかも豊富に存在しているのだ。

  
街の約4分の3が森林に覆われ林業が盛ん。

植林こそ江戸時代から行われていたが、明治期後期〜の民間払い下げ以降、人々は植樹に大変な情熱を持ち、他県では見られない驚異的な規模の植林をしたそうだ。

重要なのは、その後も山づくりが山林所有者3世代、4世代に渡り長期的に継続されていることだ。そのおかげで、大木が継続して供給可能になるのである。

放置林の問題が顕著になる現代にあって、郷土愛がなければできないことだと感じた。

大美輪の大杉(オオミノワノオオスギ)
植樹された杉では全国最古といわれる樹齢300年の杉林「大美輪の大杉(オオミノワノオオスギ)」。観光名所にもなっている。

1878年に金山を訪れた英国の女性旅行家イザベラ・ルーシー・バードは次のような紀行文を残した。

「険しい尾根を越えて、非常に美しい風変わりな盆地に入った。その麓に金山の町がある。ロマンチックな雰囲気の場所である。私は正午にはもう着いたのであるが、1日か2日ここに滞在しようと思う。」「杉で頂までおおわれた山々がピラミッドの様にそびえていた」(イサベラ・バード著「日本奥地紀行」より)

紀行文からも、昔から美林が豊富だったことがわかるね〜!美林存続のためにも、いちはやく風景に馴染んだまちづくりを始めたのかも!
明治の文明開花からの煽りや高度経済成長の渦の中で、金山町カラーの景観を守り続けたのはすごい!

とにかく美しすぎる建造物群!

街全体が、地元の木材・金山杉(かねやますぎ)のぬくもりに包まれているのだ。

観光客だけでなく、視察に訪れる人々も少なくないらしい。う〜む、素人の私でもその気持ちがわかるくらい、素晴らしい景観だった!

公共建築物のデザイン化

昭和50年ごろ(1970年代後半)から、金山町は学校や病院、 葬祭場などの公共建築物のデザイン化に取り組み始める。

認定こども園めごたま 

町の市街地にあった乳児部と幼児部が統合移転した木造園舎。

ここでも樹齢200年の金山杉が使われている。梁は幅70センチ超え、柱は直径50センチ超えの見事なもの。

住民の声を取り入れながら、森林組合や地元の大工さんらで2011(平成23)年4月に完成した。

  

金山杉に溢れた山形県金山町の認定こども園めごたま
町内唯一の保育施設「認定こども園めごたま」。陽が綺麗に取り込まれ暖かい。直径1mを超す金山杉をそのまま使った柱は圧巻。

  
  

金山杉に溢れた山形県金山町の建造物、めごたま園
“みんなの子供を、みんなで育てる 大きな家族・金山町”をキャッチフレーズに、自分の子供だけでなくみんなを育てるのが金山町流とのこと。床や壁、目に飛び込んでくる木材は全て金山杉。

  
   

金山杉でできた積み木
建材のみでなく、おもちゃまで金山杉。

  
   

金山杉に溢れた山形県金山町の建造物、認定こども園めごたまの内観
歩くたびに足裏の柔らかな感触、木肌が優しく反射してぬくもりを感じる。のびのびと呼吸のできる施設だ。ここで幼少期を過ごせたら、どんなに良かっただろうと思った。もしも自分に子どもができたら、こういう場所で育ってほしいと思える。

  
  

金山杉に溢れた山形県金山町の建造物、認定こども園めごたまの窓からの風景。
園の裏には田畑や馬小屋があり、命の勉強ができるようになっている。

  
  

めごたま園の外観。
めごたま園の外観。これだけの高さと広さの建造物を金山杉で造り切れる金山町、恐るべし。

    

めごたま園から見た風景
めごたま園から見た風景。

    

明安(みんあん)小学校

金山杉を使用した、コ ンクリートと木造の混構造方式。2001(平成13)年創立。

金山町は多雪地域であるため、雪下ろしの不要な屋根材料を採用。採光は高窓からなど随所に工夫がなされている。

「金山の杉が姿を変えて自分たちの建物や街を支えている」という街づくりの精神性だけでなく、 金山杉の新たな付加価値、生産性を意識した建築となっている。

山形県 金山(かなやま)町立明安(めいあん)小学校
天井が高い!高窓からの日差しが大変気持ちよい。木材の材質や色味の違いが、空間を豊かにする。

   

山形県 金山(かなやま)町立明安(めいあん)小学校
建築家小沢明氏が手掛けた小学校で、児童の手が触れる場所には木材を使用。教室のドアがない造りになっており、境界線を設けずのびのびと子どもたちのふれあいを生む。

    

山形県 金山(かなやま)町立明安(めいあん)小学校の廊下。
縦に美しい造りなので、写真もタテばかりになる。写りきらない、茫洋とした空間をぜひ肌で感じてみてほしい。ちなみに金山で育った人々は社会人になり県外へ出てから、金山に「戻りたくなる」のだそうです。そりゃそうだろうと思った。

   

山形県 金山(かなやま)町立明安(めいあん)小学校の外観。
明安小学校の外観。自然の明かりをふんだんに取り入れようとしている造り。

    

・金山町火葬場

金山杉の立ち並ぶ森の中にひっそりと佇む公営斎場。

益子義弘氏が設計し「森全体で人を送る」というストーリーで造られた施設。

  

金山町火葬場入り口。
金山町火葬場入り口。

   

金山町火葬場入り口の空間。
入り口を進む。静寂で、集中した空間が広がる。

   

金山町火葬場入り口。
ずっと奥にも森がのぞく。森のなかに潜っていくようだ。

     

金山町火葬場の告別室
金山町火葬場の告別室。

   

金山町火葬場の告別室
金山町火葬場の告別室。不思議と、悲しみや、寂しさ、殺伐とした不安などは感じない。告別室の窓からは杉の森が一面に見える。火葬場は家族がただ静かに待つための施設であるから、心和み安らぐ場所であってほしい。そのために生活の一部として慣れ親しんだ杉を、外側には風景としての杉木立を見えるようにしたのだそうだ。

   

金山町火葬場の告別室の窓からは、杉の森が見える。
森に抱かれている心地になる。まるで、森に還っていくような感覚だ。

    

まちの誇り「金山住宅」。助成金制度も。

金山住宅は、「美しく古びる」をテーマに、地元産の杉材を使用した住宅。

職人の手によって作られた建物は、時間とともに風景に溶け込んでいきます。

地元で育った杉材だからこそ、より気候風土に合った建物になるのです。

また、金山町に新たに住宅を建築する際は町に届け出をする決まりになっています。しかしこれは罰則規定ではなく、「金山町街並み形成基準」に適合した建造物には、助成金やアドバイスを受けられるためです。

この制度は景観の保全と、地域経済の活性化にも寄与しています。

夜の金山町
夜の金山町。

     
     

杉に囲まれていても…花粉症の心配なし!

金山町
町域の4分の3を森林が占めるというだけあって、街のどこにいても、四方に緑を見つけることができる。 もちろん全てが杉の木なわけでは無いのだが、花粉症の時期は大丈夫なのだろうか。

役所の方に伺ったところ、花粉症の人はほとんどみかけないという。むしろ治ったという人も聞くとか。おそらく、都会よりは空気がきれいなためではないかと仰っていた。

たしかに、考えられるのは都会の大気汚染だ。都会の方が緑が少ないのに花粉症発症割合が多いと聞く。自動車の排気ガスに含まれるディーゼル粉塵や、建材に使われるホルムアルデヒド、PM2.5などが、花粉に付着することによってアレルギーを引き起こしたり悪化させたりすると指摘されるのを見かける。

また、 アスファルトは花粉を吸収しないため、風で舞い続けるようだ。
ストレスもアレルギーを悪化させる要因になり得るようなので、都会の人間関係に疲れたら、金山杉に囲まれる生活も大いに選択肢に入れるべきであろう。

金山町のグルメ

豪雪地帯の金山町。反面、その雪解け水が町を巡り、美味しい農産物を育んでいます。

  • つや姫(米) 最高格付け「特Aランク」を何度も受賞した金山町のつや姫は、雪解け水で育ち、甘みと旨みが凝縮されています。
  • 酒米 山形県を代表する酒米の産地として出羽燦々(でわさんさん)と美山錦も造られています。日本酒の消費低迷が続く中、質の良い酒米を世に送り出しています。特に、特別栽培米の出羽燦々で醸造された「稲露」「酒の郷」は、日本酒の愛好家で好評を博しています。
  • 米の娘(こめのこ)ぶた お米とホエーを食べ、金山の空気をいっぱい吸い込んで育った豚肉は甘みがあって美味しいと評判。米の娘ぶたと、金山町特産のニラを使った餃子も人気です。
  • 素焼きビーナッツ 2019年に発売されたばかりで、でん六や山形大と産学官連携協定を結び共同開発した商品です。高齢化や担い手不足に対応した地域農業として、作業負担の少ない落花生の産地化を目指しています。名前の由来は「美味(ビー)」と、金山町の方言「まめ(元気)」からきています。

まとめ

街を歩いていたら、ふと出会う人々が、自然と建築家やデザイナーの名前を出していました。たまたま通りがかった方に話を聞いても、街の歴史などにも詳しい方ばかりで、金山町の景観や伝統に誇りや愛情を持たれているといった印象を受けました。

2020年の東京五輪・パラリンピックでは、選手村建築の木材として金山杉を協賛してもいます。

金山杉を守り続けながら、風景と調和した街並み景観づくりをどんどん進めている金山町に、今後も注目していきましょう!

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