
【悲報・大阪なのにソースなし!】大阪フグ消費日本一はうそだった?
みなさん、こんにちは。
お魚好きの筆者です。SNSでフグ料理やひれ酒を載せると必ずと言っていいほど飛んでくるコメントがあります。
『フグと言えば大阪が消費量ナンバーワン!』
そんな決まり文句、耳にタコ(大阪だけに🐙)ができるほど聞きました。
社会人になりたてほやほやの当時は、
「えーそうなんだ!?大阪ってすぎょい♡」
なんてコロっと信じちゃいましたけど、
いやいや待てよと。
時を経て、しかもこの真実か虚構かわからない情報の渦に瞬く間もなく飲み込まれ、ついには真偽を疑う気力すら奪われてしまうようなこの世の中で、それでも信じたい。信じたいから、この荒れ狂う大海原へ根拠を追求する船を出すのだ。
さあ、帆をあげろ。

なんかデータとかあるんですか?

うそはうそであると見抜ける人でないと難しい。
大阪がフグ消費量全国1位だったのはいつのこと?

魚の図鑑を何冊も見たがフグの欄にそういった情報は見受けられない。
「おいしく食べよう魚」系のライトな本には、1冊だけ記載があった。だが2011年発刊だから10年以上前の本である。ちなみに奥付(おくづけ。本の一番最後のページ)をみると
”データは発刊まで全国各地に問い合わせ、 掲載に支障がないと判断したものを収録した”と但し書きがしてあった。それなら一旦信じてみよう。真実かどうかは別として。
であるならば、現時点での疑問はこうだ。
「大阪のフグ消費量、そんなに長年1位が続くものなのか?」
なにせ、2020年には、かの大阪フグ文化の象徴的存在とも言える、フグ料理の名店「づぼらや」が閉業しているのだから。

chatgptにきいてみるわ。
やはり最新の動向が知りたいからね。AIよ、オラに最新情報をよこしてくれ!
私「大阪がフグ消費量全国1位だったのはいつのことなの?」
下記、chatgptからの回答。
————————ここから
・フグ食が日常的な文化だった大阪(1980〜1990年代初頭)
1980年代から1990年代初頭、大阪はふぐの消費量全国1位を誇っていました。商業都市でもある大阪には多くの人々が集まり、ふぐを提供する高級店や専門店も多く出店し、ふぐの消費が活発でした。フグの旬である冬の時期には、消費量は特に増大しました。(by chatgpt)
・福岡に、1位の座を明け渡す大阪(1990年代後半〜)
しかし、1990年代後半以降、ふぐ消費量が増加した福岡県にその座を譲ることになります。現在では福岡が1位となっています。福岡では、地元の文化としてふぐ料理が定着しており、消費量が安定して高いのです。(by chatgpt)
————————回答以上。
私「ソースも明示して?」→chatgpt「ない。ゴメソ」
chatgptさんは大阪ではなく福岡が1位とまで言い出した!
それ本当だったらドヤ顔で『大阪がナンバーワンだぜ?知らんのか?』など噂レベルのことをさも自身の手柄のように抜かす人々にひと泡吹かせられるじゃない。
でもそのために、とにかく根拠がほしい。
私「福岡に抜かれたんだね!それらの明確なデータがあるなら示して!」
chatgptさん「(数秒の間)……….申し訳ありません。情報源は見つかりませんでした。また、消費量の統計も見当たりませんでした。」
私「……..。」
みなさん、本当にAIの盲信には気をつけましょうね。
現時点では、AIというのは、勝手なことを吹聴する人間が過去に書いたwebを元に、切って貼って、現在の私たちに提示してくれているに過ぎないのだから。(だからAIが悪いわけではなく、過去に嘘を並べてきた人間が悪い。また、嘘かどうかも疑わずに耳目にしたものを言いふらしてきた者も同罪だ。)ひろゆきのかつての名言は確信をついていた。”うそはうそであると見抜ける人でないと難しい”。当時は2ch掲示板について言及して出た発言だが、今更ながら、現代のど真ん中を貫く名言だったと改めて思う。ネットとAIが真実をスパイスとした虚構の世界を恐ろしいスピードで築く。さながらSagrada Famíliaのように人々は自分の住む大地に得体の知れないものがみるみるうちに建設されてゆき、しかしその構想を何人たりとも理解できないまま、労働力をいくら差し出したとて終わり(完成)に辿り着けず、それでも見た目はより美しく、人々を魅了し、機能に頼り、未知の世界へのロマンを求める人が人を呼び、影響力は増幅し続け、はらり知らぬ間に居場所を明け渡すことになるのだ。

『大阪1位』『大阪が全国のフグ6割を消費』って明言してるサイトに凸
(さて、また脱線してしまった。)
次に、web上でランキングや消費割合を数字として明言しているサイトに突撃してみた。
だって、明言できるってことは、その情報に自信があるってことでしょ?
そしたら、その情報の根拠に近づけるかもしれない!情報が知りたければその情報をすでに持っている人の元へ!
しかし、結論から言うと、「今のところ返答なし」、、、である。
誤解されたくないのは、私は”ウソを暴きたい”わけではないってことなの。
別にね、ゴシップや雑談レベルでは根拠が無いこといくら言ったって良いと思うの。
「私はこう思うんだ〜!」「俺はこう感じるんだよね〜!」それは良いと思うんだ。
けど、自分自身のことでもなく、自分自身が見たり体験したことでもないのに、「これは、こうだ!」って言い切るのにはちょっと抵抗がある。
とくに良くないと思うのは、そういった虚勢を張ったような情報で人寄せすること。
今回のフグで言えば、公共の放送局の公式サイトで「大阪が全国の6割を消費」をタイトルに使用してたり、通販会社が「全国1位の味をご家庭で!」などと宣伝文句にしたりしてる。数字言っちゃうのは根拠ないとできないもんね!
放送局は電話してみたが、「とくに根拠というか取材資料が手元にございませんので、申し訳ありませんがわかりかねます。」とのこと。そして「あとは手紙かメールでご意見くださればと思います。必ず回答があるわけでは無いんですけど。」
通販会社においては、メールで問い合わせているが、今のところ返答なし。
別にこれらの会社を責めるつもりはない。
まだ問い合わせから1週間弱なので少し気長に待つが、私はあることに気がついた。
「ちょっと待てよ。消費量ってどうやったらわかるんだ。」
漁獲量のランキングはわかりやすい。船から上がった魚の量だ。生産量ともいう。
でも、消費量って、どうやって統計取るのさ?まさか飲食店が取り扱ったフグの量のことか?てことは、業者がどの県の飲食店にどれだけ卸したのかを逐一記録して国ないし県に報告し、管理されてるってことなのか?しかも、魚種別に???考えづらい。そこまで膨大な手間とコストをかけて県ごとの消費量を管理するとすれば、一体何のためなのか。

水産庁と総務省と大阪府にきいてみた
やはりなんのバイアスもなく、口の端のくだらない(おっと…)情報などに左右されることもない、確固たる数字の巨塔である、我が国の公式機関に問うてみるのがいいのではないか!?
web上に公開されている資料を見漁るが、どうしても県別の消費量には辿り着けない。県別の生産量(=漁獲量)はあるが、消費量は見当たらない。
ええい、こうなれば直接聞くまでよ!
・まずは水産庁へ電話
ここでは、ざっくりいうと「漁獲や海洋のことを主に扱っているため、消費については総務省の管轄になる」とのこと。そうか、水産庁は海中か海上で行われている物事を取り仕切っているのだな。陸に上がれば総務省か。
・総務省へ問い合わせる
ここでは「家計調査における消費量のデータを扱っている」とのこと。
ランキングを聞いてみたが、ここではフグは魚種として1項目を与えられていないから明確にわからない。「その他の魚類」項目のなかで他の魚種と合わせた量しか統計されないとのこと。
よく聞いてみると、そのはずだ。総務省が統計をとる消費量は、「家計調査」における消費量。
「家計調査」における消費量とは、家庭内での魚食の消費額を、世帯主から申告されたものを統計したものであるそうだ。
なるほどフグはランク外だ。なにせフグの素人調理はご法度である。スーパーなどで「身欠(みがき)フグ」として処理された状態で販売しているものを見かけなくもないが、フグ食の主流は、免許をもつ料理店である。
お電話口の方に、他に消費量の統計を持っていそうな部門を聞き、その後もはしごのように3部署に問い合わせさせていただいた。
みなさまそれぞれ、いろんな切り口で、丁寧に探してくれた。
しかしいずれの部署でも、「どの業者が仕入れ、どこに納品したかの調査は行われていない」という話だった。
・ついには、大阪府に問い合わせる
もうこうなれば本丸だ。
ちなみにここに電話するのが1番緊張した。なぜならば大阪に俺もゆかりもない私がこういった内容で問い合わせてしまえば、相手はまるでかちこみのように感じられてしまうだろうからだ。手に汗を握りながら、なるべく丁寧に、でもなるべく怪しい者ではないように、慎重にしゃべった。
少なくとも私の記憶では、大阪がフグ消費一位だと威張る者で、大阪出身だった例がない。きっと大阪に憧れた者たちが虚勢を張っているに過ぎないのだ。(なんの虚勢かはおいといて。)
するとどうだろう、「この電話ではすぐに資料が見つからず回答できないが、せっかくの機会だから参考になりそうな資料を少し探させてほしい。そのために、折り返しさせてほしい。」とのこと。
な、、、好きになってもいいですか?
大阪すごいわ。大阪、良いです。良いとこです。
・折り返しが来た!
大阪府からお電話の折り返しが来た!(このご時世、もうそれだけでありがたぃ)
2時間弱たったあとのことだ。
結果は、
大阪府「申し訳ありません、やはり”消費量”という明確なデータが無くてですね、」
私「(ああ、このお方、悔しそうだ。つらたん。)はいぃぃ…そうですよね、県別のフグの消費量を管理するなんて現実的ではないですよね。」
大阪府「あと、念の為にといいますか、消費量とはズレますが府内のフグを取り扱っている店舗数を調べてみたんですが、」
私「(これまで色々な機関へ問い合わせてきた経緯もお伝えしてあるため、他とは重複しない。新しい提案を自らくださるシゴデキな職員さんだああああ!)はい。いかがでしたでしょうか。」
大阪府「それが、飲食店数のデータも、”和食店”や”日本料理屋”という大きなカテゴリーになってしまいまして。これではフグの取り扱いがあるか否かまでがわかりかねる状況です。もとよりフグ料理屋というカテゴリーもなく…….。申し訳、ありません。」
私「(あああ、このお方、とてつもなく悔しそうだ。けどちゃんと答えを出そうとしてくれたの伝わる…!)いやもう、ここまでお調べいただいて本当にありがとうございます!お忙しい中、本当にありがとうございますっ!!(体育会系でちゃった☆)」
大阪府「お力になれず、申し訳ありませ….
私「いえもうこんな風に、折り返しまでいただいて、丁寧にお調べいただきありがたい限りですし、嬉しかったですっっっっ!(?)」
——このあと、1、2分、大阪のフグにまつわる世間ばなしをしたふたり。少しだけ、笑った。———
大阪府「とんでもないです(まだ悔しそうだが)。お電話いただき、ありがとうございました。」
私「こちらこそ、ありがとうございました!」
がちゃ。
まとめ
数時間のできごとであったが、壮大な社会システムを垣間見させていただいた気分だ。私は答えを、走りながら求めていたようだ。だって、疲労感と同時になにか達成感のようなものを知覚したからだ。この達成感とは、きっと今後、この小さなスキマともいえる「フグの消費量ランキング」が、一生の使命となるかも知れない予感をつかんだことに起因するだろう。
最後に、各役所のご担当者さま方には、心よりの感謝を申し上げます。
本当にありがとうございました!

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